魔法の植物のお話
     − ヨーロッパに伝わる民話・神話を集めて −
浅井治海 著
ISBN978-4-902410-16-7
■体裁/A6判・256頁    ■価格/2,160円 (本体2,000円+税) 送料380円   ■発行/2008年9月 

刊行のねらい

 人類は植物に頼って生きてきた。人以外の動物も植物を直接・間接的に利用してきた。その第一は食糧植物としてであった。どのような植物が 病気の症状を和らげ、また治療することができるかを学んだ。そして、性欲を刺激し、発散させ、幻覚を呼び、恍惚とさせる植物も見出された。
 人間は新石器時代には植物の栽培を始めた。衣服は植物の繊維から作られ、芳香剤、建築材、そして種々の道具を作る材料でもあった。植物の観察から人間は植物の中に全く特別の力が隠れているに違いないと感じ、魔法の力があると信じるようになった。
 古代には悪い幽霊が魔法や魔術で人間や動物に苦痛を与え、それで病気になると考えられた。植物はこれらの悪い幽霊や魔法を防ぎ、病気を治療し、愛を得る 魔法に、媚薬に、堕胎剤などにと人間生活に直接的、間接的に関係してきた。古代の人々は多くの経験から、無数の失敗を繰り返しながら植物を利用する術を手 に入れたのであろう。特に、植物の持つ人間や動物の病気治療に関する知識や経験は、人から人に受け継がれ、何物にも代えられない貴重な知識や情報となっ た。これらを主として行い、伝えた人は、例えばゲルマン人社会では“賢明な女”と呼ばれた人たちで、薬草の知識を蓄積し、薬草を採り、あるいは育て、それ らを病気や出産に役立てた。
 祭祀にも植物の知識が大きな影響を与えた。マンドラゴラ、ヤドリギ、ベニテングダケのような魔法の植物が用いられた。魔法の世界では生命を持たないもの が、この世やあの世のすべてのものに結び付いていた。魔法の処方には特定の石、動物、人間の排泄物、そして特に多くの植物が必要であった。
 中世から近世にかけて、キリスト教会は薬草の知識に富む女たちを自ら作り出した悪魔と結び付けて独自の魔女とし、それらを排除せんとしたのが非道の魔女 狩りで、多くの無実の女性が焼き殺された。多くの魔女伝説が生まれ、近世には悪魔、魔女、魔法などを娯楽として利用した商業資本も現われた。
 十九世紀に入って民俗学が定着し、植物に関する民俗学的研究も進み、民族の中に古くから記録された植物の力の源があり、そこには植物の医学的応用と魔法信仰や数多くの風習が保存されている。
 ここでは、人はこれらの植物にどのような関心を抱き、利用してきたかを纏めてみた。それらに関する現代の立場での解釈ではいろんな疑問が浮かび上がり、 異なった解釈や利用が可能であろう。これらを振り返ることによって、祖先の薬草の知識を求めた苦労を忍ぶとともに、それらが現在社会で生きるのに少しでも 役立つことを願った。ここでは、草本を中心に述べた。筆者の浅学で多くの間違いがあるものと思われる。ご指導頂ければ幸いである。

      2008年夏                         著者


                          目   次

1 植物による魔法
 1.1 歴史的な流れ
  (1)古代
  (2)中世から近世初期
 1.2 治療と防疫
 1.3 愛の魔法
 1.4 農業と家畜
 1.5 身を守る
2 悪魔・魔女と植物
 2.1 悪魔と魔女
 2.2 魔女の塗り薬
 2.3 魔女狩り

<いろんな魔法の植物>
3 幸運の植物
 3.1 アクタエア・スピカータ
 3.2 アカツメグサ、シロツメクサ
 3.3 アマ
 3.4 アマドコロ
 3.6 アルケミラ・ウルガリス
 3.6 エンドウ
 3.7 チコリ
 3.8 セイヨウシダ
 3.9 セイヨウサクラソウ、セイタカセイヨウサクラソウ
 3.10 チャボアザミ
 3.11 ベルガモット
 3.12 マンドラゴラ
 3.13 モウセンゴケ属
 3.14 ラベンダー
4 治療の植物
 4.1 クサノオウ
 4.2 セイヨウイラクサ
 4.3 セイヨウオオバコ
 4.4 セイヨウノコギリソウ
 4.5 センタウリウム・ラリトラエア
 4.6 トウキ
 4.7 タラゴン
 4.8 ニガハッカ
 4.9 ヨウシュホオズキ
 4.10 ヨモギ(含ニガヨモギ)
 4.11 ベルバスクム・デンシフォルム
 4.12 ライムギ
 4.13 ルリチシャ
 4.14 ワレモコウ
5 予告の植物
 5.1 アルム
 5.2 イヌサフラン
 5.3 セイヨウタンポポ
 5.4 タマネギ
 5.5 ドイツスズラン
 5.6 ヒナギク
 5.7 ヒナゲシ
6 愛の植物
 6.1 キンセンカ
 6.2 クマツヅラ
 6.3 サルビア
 6.4 白いスイレン
 6.5 セイヨウカノコソウ
 6.6 ダクチロリザ・マクラタ
 6.7 バジル
 6.8 ハッカ属
 6.9 ブリオニア
 6.10 ヘンルーダ
 6.11 マンネンロウ
 6.12 ロベッジ
7 悪魔と魔女の植物
 7.1 アサ
 7.2 イヌホオズキ
 7.3 エニシダ
 7.4 オオカミナスビ
 7.5 クリスマスローズ
 7.6 ケシ
 7.7 白いヘレボルス
 7.8 白花洋種朝鮮朝顔
 7.9 スッキサ・プラテンシス
 7.10 スベリヒュ
 7.11 ソラヌム・ドルカマラ
 7.12 チャービル
 7.13 トウダイグサ
 7.14 ドクニンジン
 7.15 ドクムギ
 7.16 パセリ
 7.17 ヒヨス
 7.18 ベニテングダケ
 7.19 ヨウシュトリカブト
8 身を守る植物
 8.1 アルニカ
 8.2 アリウム・ヴィクトリアス
 8.3 イノンド
 8.4 ウイキョウ
 8.5 ウマスギゴケ
 8.6 エゾネギ
 8.7 エゾヨモギギク
 8.8 オウシユウヒレアザミ
 8.9 オオグルマ
 8.10 オランダシャクヤク
 8.11 カミツレ
 8.12 ガリウム・ウェルム
 8.13 グレコマ・ヘデラケア
 8.14 ゲッケイジュ
 8.15 クロウメモドキ
 8.16 コリアンダー
 8.17 ジャコウソウ
 8.18 セイヨウオトギリソウ
 8.19 セイヨウハシバミ
 8.20 セイヨウヤドリギ
 8.21 ニンニク
 8.22 ヒカゲノカズラ
 8.23 ヒメウイキョウ
 8.24 広葉ニンニク
 8.25 マヨナラ
 8.26 ヤネバンダイソウ

補(1) クルマバソウ
補(2) ノジシャ

参考文献

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